全国最大引き上げ幅の佐賀 背景に隣県・福岡への危機感
佐賀県内の最低賃金が、14日から時給900円に引き上げられた。
引き上げ幅は全国最大の47円で、最低賃金は全国最低の水準から一転して、
九州では福岡県に次ぐ2番手に立つ。関係者が「900円ショック」と
驚く引き上げの背景には、隣県・福岡への雇用流出への危機感がある。
引き上げを答申した審議会の内幕と、地場企業や地域経済に与える
影響を探った。 (米村勇飛、杉野斗志彦、床波昌雄、川合秀紀)
■「最下位脱却」議論の土台に
「早々に外堀が埋まった」。佐賀地方最低賃金審議会の
関係者は苦笑する。議論の前から、異例ずくめの動きがあったからだ。
8月初めに始まった審議会に先立つ7月13日、山口祥義知事が、
審議会の富田義典会長に対し、県として初めて要請した。
要請書では「賃金の上昇、消費の拡大という好循環」が重要とした上で
「人材確保難が深刻化し、最低賃金が全国最下位であるという
現状を勘案」する議論を求めた。
さらに、審議会開始時には、県幹部が直接説明したいと出席を求め、
県として初めて審議会で発言した。大幅な賃上げを掲げる
岸田文雄政権の姿勢に通じる知事の強いメッセージ。
「最下位脱却の引き上げが必要という認識が議論の土台」(関係者)となった。
■「福岡との差を縮めないと…」
審議会では、労働者、使用者(経営者)、識者ら公益側の3者が
各種データを基に最低賃金額を議論した。関係者は「議論のキーワードは
『最下位脱却』に加え、『福岡との差』だった」と証言する。
県境を接し、賃金の高い福岡側で働く佐賀県民が多いからだ。
実際、ある委員が、県内から最も雇用流出している県を尋ね、
県側が「福岡県」と回答する場面もあったという。
従来の最低賃金では、福岡県の900円に対し、佐賀県は853円で、
47円の差があった。福岡の審議会が一足先に941円への引き上げを
答申したことを受け、佐賀では「単なる引き上げでなく、少しでも
福岡との差を縮めないといけないとの空気が強くなった」(関係者)。
労働者側は、物価高などを理由に大幅引き上げの圧力を強めた。
だが、コスト増を避けたい使用者側は引き上げ幅圧縮を主張し、
結論はなかなか出なかった。
複数の関係者は「労使の差は約20円あった」と明かす。
全国で最も遅い8月18日に公益側が提示した900円案で、
賛成多数でまとまった。
これで福岡との差は41円となり、4年間で計10円縮まったことになる。
知事も労働者側も「一定評価したい」と歓迎するが、審議会関係者は
「差がまだ大きい中、福岡への雇用流出をどこまで防げるかの試算や
議論はないまま。実効性の事後検証も難しいのではないか」と指摘する。
■“県境の街”の厳しさも
福岡県と県境を接する鳥栖市。最低賃金引き上げに伴い、
スーパーなどでは今月から、900円以上だった時給を50円程度
引き上げる動きが出ている。時給が上がった市内の60代の
パート女性は「夫の扶養内なので収入は増やせないが、時給が
上がると時間にゆとりができるのでありがたい」と好意的に受け止める。
一方で“県境の街”ならではの厳しさもある。
鳥栖商工会議所によると、時給が高い福岡県との人材獲得競争に
苦慮する飲食店が多い。
「これまでも時給1000~1200円出さないと人は集まらなかった」と、
ある飲食店経営者。「鳥栖から福岡県に通う学生もアルバイト先は
賃金が高い福岡を選ぶので、さらに賃上げが必要になるだろう」と、
さらなる時給上昇を警戒する。
使用者側の厳しい受け止めは、時給900円未満に設定してきた
事業者が多い県西部でも同じだ。輸送やホームセンターを手がける
鹿島市の企業担当者は「ホームセンターの従業員の7割はパートが
占める。正直、最低賃金引き上げは厳しい」と語る。
■賃上げを後押しする県の期待
そうした中、県は賃上げを後押しする考えだ。県議会9月定例会で
「佐賀型賃金UPプロジェクト」を打ち出し、計約4億8千万円を予算化。
賃上げした小規模事業者を対象に、生産性向上につながる設備や
システムなどの導入費の3分の2を助成する。条件は(1)事業所内の
最低賃金を3%以上引き上げる(2)最低賃金900円を上回る-の二つだ。
県の担当者は「業務効率化すると、その分、賃上げに活用できる」と期待する。
ただ、佐賀市の飲食店経営者は、原材料費の高騰を理由に、
この1年で商品を値上げしたばかり。時給860円で数人を
雇用してきたが、さらなる値上げや従業員の出勤減で、
時給40円以上の賃上げに対応するという。「出費がかさみ、
先行きも不透明な中で、さらに先行投資までするのは…」。
助成制度の活用には前向きになれない。
■あいまいな実効性に懸念も
賃金上昇と消費拡大の「好循環」の鍵となる適切な価格転嫁に
ついては、都道府県や経済団体などの官民が協定を結ぶ動きが
全国で相次ぐ。九州では福岡、長崎、大分、宮崎4県が
締結済みだが、佐賀県は未定だ。
佐賀の審議会関係者は「実効性があいまいなまま来年以降も
ムード優先の引き上げが続くと、企業は苦しくなる一方だ」と
懸念する。県内の商工団体関係者は「賃上げと成長が両立した
モデルケースを、行政や経済団体などが示せたらいい」と話す。
【引用元:西日本新聞】
https://news.yahoo.co.jp/articles/41078a2df509008fc5b92e14aa8331e66ba91bc7
佐賀県東部ですと福岡県までのアクセスも良く
通勤圏内の方も多くおられると思います。
賃金ギャップにより少し無理をしても県をまたぐ方も
おられると思います。
最低賃金を上げることは企業への影響は大きいですが
そもそも人員及び人材不足であればそれ以前の
大きな問題になります。
多角的に問題解決が必要になってきますので良いモデルケースに
なれば今後の発展につながりますね。

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